介護を「しあわせな経験」にするために

えれじあ ぷらて~ろからの提案

わたしたちは誰でも皆、いつかは人生の終幕を迎えます
でも「介護」というと、わたしたち は
「できれば考えたくないこと」と思いがちです

なぜでしょうか?

それは わたしたちが
親や家族、自分にとって大切な人をケアするために必要なことを
なにひとつ教わっていないからです

親の介護と看取りについて、
経験者が伝える知識と、ほんの少しの勇気を持てば
「つらい経験」が「しあわせな経験」に変わっていきます

そしてこの経験は きっと
自分やパートナー、子供の人生を豊かにする糧になるはずです 

 
あなたも「介護」をつうじて
親孝行をはたすとともに、ご自身の人生の「学び」を
豊かにしていきませんか

私が介護から学んだこと

私はおよそ6年間にわたって両親の介護をしてきました。
その間、多くのことを学びましたが、その中でも特に強く印象に
残ったことがら(「排泄への想い」「食事への想い」など)を
挙げたいと思います。

 介護から学んだこと ① 排泄への想い

母が初めて要介護状態になったのは、転倒して尾骨を骨折した時
でした。手術の適応ではないため、すぐに自宅での介護生活が
スタート。痛みのため自力では起き上がれず、トイレのたびに
私の首にしがみついてベッド脇のポータブルトイレに座りました。この時の母の重みは今でも忘れられません。
「排泄はトイレでしたい」という強い想いはこの時に刻み込まれ
ました。 (写真は木目調のポータブルトイレです)

介護から学んだこと② 「食事」への想い

三度目の転倒で入院した時の母の食事は完全ソフト食。
看護師さんが食べさせてくれるのですが、美味しくなさそうです。そこで仕事を早く切り上げ、夕食介助をさせてもらいました。
ゆっくりペースで食事を口に運んでも表情は暗いまま。
そこで母が好きな崎陽軒のシウマイ弁当を買ってきました。

すると黄色のパッケージを見た途端、それまで動かさなかった手で、弁当のヒモを引きちぎろうとするではありませんか!

「ぼけてきても、食べたいものは変わらないんだ!」と
食べ物への強い思いをこの時に知りました。

介護から学んだこと③ 一日一回「ありがとう」を

毎日の介護で体力的にも精神的にもつらい時、「ありがとう」
なんて言えない。わかります。それでもコンビニのレジにいる人でもいいです、一日一回、誰かに言いましょう。「ありがとう」と。
他人に放つ「ありがとう」は、実はあなたが自分自身に贈る美しい「花束」なのです

介護から学んだこと④ 一緒に走る仲間を持つ 

 介護は決してひとりではできません。特に在宅での介護には
ケアマネをはじめ、ヘルパーさん、訪問看護師・理学療法士など様々な専門職の力が必要です。「わたしは独りじゃない」、そう
思わせてくれる介護スタッフと一緒に駆け抜けましょう。

看取りのとき 

最期の時が近づくと、だんだんベッドにいる時間が長くなり、 

食事を取らなくなります。そして呼吸が浅くなり、意識のない状態が続いた後にひっそりと息を引き取ります。「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつもなんどでも」にありますね。
「さよならの時の静かな胸  ゼロになるからだが耳をすませる」

見送りのとき 

母を見送るとき、私は自宅での葬儀を選びました。 

介護で疲れ切っており、改まって人に気を遣ってまで葬儀をしたくなかったのです。自宅にいるおかげで、もう目を開くことのない母と心ゆくまで対話をすることができました。
「お互い頑張ったよね」。

『今日が人生最後の日と思って
 生きなさい』(小澤竹俊著 アスコム刊)


ここでは私が介護をする中で、支えになった本を紹介していきます。最初に紹介するのは、介護の合間に寄ったスーパーのレジ脇に置かれていた本です。著者の小澤先生は沢山の方の看取りをした ホスピス医。


「人のために火を灯せば、自分の前も明るくなる」。この言葉にどれだけ救われたでしょう。

『ウンコ・シッコの介護学』
(三好春樹著 雲母書房刊)


著者の三好春樹さんは、介護に関わり始めた初期から「おむつ外し学会」を結成し、その名の通り、施設でのおむつをゼロにしてきた伝説の理学療法士です。

「ウンコ・シッコを自力でさせないでおいて、老人の尊厳について語ってはいけない」という言葉にハッとさせられました。

『看護覚え書き』
(ナイチンゲール著 現代社刊)


クリミア戦争時の献身的な介護で有名なナイチンゲールは、実はとても合理的な考えを持った人でした。今では当たり前にあるナースコールもナイチンゲールの創案にかかるものです。「全ての患者は自宅で看護(介護)されるべきである」と考えていた彼女の著書には介護に生かせるアイディアにいっぱいです。

『最初の質問』
(長田弘・伊勢英子著 講談社刊)


「今日、あなたは空を見上げましたか」という質問にはじまり、全編が質問と伊勢さんの美しい絵で構成される絵本です。

認知症が進み、「おかあさん、ねえや」と虚空にむかって呼びかける母を寝かせた後、「何歳のときのじぶんが好きですか」という言葉を読んだ時に涙があふれてしまいました。それは母のために泣いたのか、自分のためだったのか今でも分りません。

『死を生きた人びと』
(小堀歐一郎著 みすず書房刊)


著者の小堀歐一郎先生は、森鴎外の孫。
東大病院を定年で退職した後、在宅医療に転じました。NHKのドキュメンタリーや映画「人生をしまう時間」でご存じの方も多いのではないでしょうか。「人の死に際して医師は席を外すべきだ。なぜなら死は家族だけで分かち合うものだから」という小堀先生のメッセージは家族を想うすべての人への熱いエールです。

『海街 diary』
(吉田秋生著 現代社刊)


中学時代に『カリフォルニア物語』を読んで以来、大好きだった 吉田秋生さんが 鎌倉を舞台に描いた四姉妹の物語。違う母をもつ姉妹の複雑な思いを描いた作品ですが、医療ドラマとしても秀逸。授業でも使わせてもらいました。
「立ちあがってたたみなさい 君の悲嘆の地図を 」というオーデンの詩の一節は 、いつ終わるとも知れぬ介護で途方に暮れる私に向けられた言霊のように感じました。

鎌倉自宅葬儀社との出逢い

母の最期が近いことを訪問医師から告げられた時、お葬式をどうしようかと迷いました。その時に友人が紹介してくれたのが「鎌倉自宅葬儀社」でした。六畳の部屋でのこぢんまりしたお通夜には、母のケアに関わってくれたヘルパーさんや訪問看護師、理学療法士の方達が、仕事中にもかかわらず、20人以上も来て下さいました。

「葬式はやらないでいい」と言っていた母でしたが、母が大好きだったクチナシの花を飾り、最後の挨拶に来てくれた皆さんには母のレシピで作った料理を食べていただくことができました。

ユマニチュードとの出逢い

ユマニチュードはフランスの体育講師、イブ・ジネストさんが創始した高齢者ケアの技法です。NHKや民放の報道番組でも紹介されました。車椅子での生活が何年も続き、看護師さんの口腔ケアを拒否していたお年寄りが、ユマニチュードのケアを受けた後、自分から車椅子を降りて歩き出したシーンに涙された方も多いのではないでしょうか?

 「人間らしさ」を意味するユマニチュードのケアが素晴らしいのは、ケアされる側だけでなく、ケアする側も「幸福」になることです。専門職が無意識に持っている「心の鎧」が解き放たれるからなのですね。

 

私は母を見送ってからユマニチュードを知りましたが、もし介護中に知っていたらもっといいケアができたのに、といまでも残念に思っています。 

幸せな介護のために  

介護の全体像を知りましょう

介護に対する不安の多くは、「経験したことがない」「介護するイメージができない」ことに由来します。この不安を取り除くために、まず介護の全体像を知りましょう。

幸せな介護のために  Step 1

介護保険やシステムについて知りましょう


「介護認定ってどこで申請するの?」「ケアマネって何をしてくれる人なの?」「介護用のベッドってどこで頼むの?」。
介護保険は家族の介護負担を減らしてくれる大きな「武器」ですが、初めてだと、どこに何をお願いしたらわかりませんよね。まず、そこからスタートしましょう。

 幸せな介護のために Step 2 

 伴走してくれるとスタッフとともにOne Teamを

 

病院で長期にわたって入院していたり、弱ってきた親や家族を 
見ていると、私達はやがて訪れる最期の時のことばかり考え、 
無力感におそわれがちです。でも私達は元気なときであっても、「誰か支えになってくれる人が伴走してくれる」と嬉しいですよね。介護も同じです。 大切なことは「最後まで一緒に生ききる」ことです。

 幸せな介護のために Step 4

「やすらぐ」介護環境を作りましょう

 

あなたはご自宅でご家族の介護をなさっていますか?それとも施設でお願いしていますか?どちらも大丈夫です。大切なことは、
 

  1. 「自分の味方だ」と思える人と慣れた物に囲まれていること 
  2. 時間の流れがご本人にとってやすらげるペースであること


です。難しいことのように思えるかも知れません。でもあなたが最後の時間を過ごすときにこのような環境が欲しいと思いませんか?介護でも同じなのです。

 幸せな介護のために Step 5

心の許せるケアマネジャーと主治医を選びましょう

介護には様々なスタッフが専門職として関わりますが、重要な
ポイントはよいケアマネージャーと主治医を選ぶことです。

良いケアマネ、主治医の条件とはなんでしょうか?

それは家族であるあなたを「独りにさせない」人であること、 
そしてあなたの大切な家族の「生活」と「人生」を知ろうとしてくれる人であることです。

在宅での看取りを考えていらっしゃる方は往診して下さる医師を選びましょう。また、急変が予想される場合(ガンの場合など)は、医師とのコミュニケーションに迷いがないケアマネジャーを選ぶことが大事です。

 幸せな介護のために―あなたへのメッセージ 

「アンパンマンのマーチ」がおしえてくれること

「アンパンマンのマーチ」にはこんな歌詞があります。

なにが きみの しあわせ
なにをしてよろこぶ
わからないままおわる

そんなのいやだ


介護が苦しいのは、私達が子供の頃から「老い」や「死」について何も教えられず、自分のできることがイメージできないからです。人間は頭の中でイメージできないことについて、行動を起こすことができません。そして様々な専門職の意見に振り回されているうちになんのために介護をしているのか、その意味を見失ってしまうのです。もし、少しでも身体やケアについて知識があったら、そして周囲のスタッフを一緒に走る仲間にすることができたら、それは介護の場面だけではなく、あなたの一生を支える智恵になります。

私も介護をしていて、両親がなにをしたら喜ぶのか、幸せなのか、それがわからないまま終わるのはイヤだったのです。たとえそれが自分と折り合いの悪かった両親だとしても、それがわからずに終わってしまったら、自分の人生も最後を迎えるとき、意味がわからないものになってしまうと思ったのです。

「えれじあぷらて~ろ」では、大切な家族のためにアンパンマンになりたいあなたのサポートをしたいと思っています。関心がおありのかたはどうぞコンタクト下さい。一緒に走りましょう

介護関連の講演・

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家族の視点で学ぶ介護の世界

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ナイチンゲール『看護覚え書き』に学ぶ介護

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Note「東洋医学の智恵と歴史」

介護をテーマに書いたエッセイを不定期でNote
掲載しています。よろしかったら訪ねてみて下さい。
また鍼灸師向けメルマガ「あはきワールド」でも不定期ですが連載しています。
(「夢の轍をあるきながら」「未来への灯火」)